DRUG STORE
写真・文/織田城司 Photo & Essay by George Oda
街で色あせた看板のお店に出あうと、ここはいつの頃からあるのかと思い、ふと店内を見たい気分になる。
最近、新しいお店でも、あえて古いビルをそのまま使いながら、看板や扉に中古加工をほどこし、老舗を装うお店も増えている。遠くから見ると雰囲気はあるが、近くで見ると素性がわかり、興ざめとなる。
出雲街道の新庄村で出あった山田商店の看板は、正真正銘の色あせた看板であった。
鯉が泳ぐ用水路のうえの看板は、退色して判読できない日用百貨という赤文字に本物の表情があり、むかし、どの街にもこんな雑貨屋があったと思わせる。
お店は古い部分を残しつつ、地域に密着しながら現在進行形で営業を続けている。近年は、川むこうに道の駅ができたことから、品揃えには独自の工夫が感じられた。
この地域では、庭の菜園を楽しむ家庭が多いことから、ガラス戸に目立つ白抜き文字の新着商品入荷情報は、「秋まきのタネ発売」である。店内には、煙草や飲料などの嗜好品の他に、ロープや漬物樽、ナベ、タワシなどを置き、変わったところでは「もぐら取り700円」の手書き札が目を引く。キャンパーが買うのか、カセットコンロの棚は品切れであった。
独立系の専門店は、チェーン店のように中央本部がビジュアル・マーチャンダイジングを用意してくれるわけではないので、メーカーが商品と一緒に送る販促物を大事に扱う。ホーローの看板にはじまり、ロゴ入り置き時計、貯金箱、消えてしまったアイドルたちがビールジョッキを持つポスターなどが混在する空間は、戦後の広告史を見るようだ。
時代を無作為にコラージュした混沌が生み出す魅力は、土着の専門店ならではである。土産の酒は、ここで買うことにした。