写真・文/赤峰幸生 Photo & Essay by Yukio Akamine
毎回ミラノに立ち寄ると一日は名だたる専門店を表敬訪問のように覗いてみる。特にカポスパーラといわれるスーツ・ジャケット等のドレスラインを中心に展開する店を見ている。紳士服特有の微妙な変化を各店がどの様に捉え表現しているか;素材感・色感・襟巾・色合わせ等が、一見すると同じ様に見えがちな中で絶妙な変化を読み取るのが面白い。
ミラノの昼休み時間はスーツ姿の男たちがランチの為に街にどっと繰り出し様々なミラネーゼクラシックを見る事が出来る。多いスタイルはミディアムより少し濃いめのグレイスーツにワイドスプレッドカラーの白かブルーのシャツに紺や茶の無地タイ、白のポケットチーフというスタイル。またはネイビーのジャケットにグレイフランネルのパンタローネ、茶系のスェードシューズのスタイルのいづれかがお決まりのミラネーゼジェントルマンズスタイルだ。
ミラノ風のクラシックスタイルは元々ロンドンのサヴィルロウの構築的な服をイタリア的咀嚼によりミラネーゼスタイルが出来上がり、数年前まではアングロイタリアーノ等と呼ばれた時代を経てクラシコイタリアが確立された。
これらのアイテムを販売する専門店で、かつてはクラシコイタリアブームが起こった時代の中核的存在の店が次々と閉店の危機に追い込まれている。原因は世界的カジュアル化の流れ。時代が求める軽量化・機能化・簡略化などで正統クラシックスタイルがどんどん崩れ品揃えから姿を消し始めている。
コルソマジェンタのM.BARDELLI(バルデッリ)のオーナー;ジャンニモディカ氏にミラノ専門店事情を聞いてみた。すると、「従来のクラシックスタイルでは今の時代には重すぎるし、現代あるなんでも洗いを掛けた品揃えはクラシックとは言えずどのくらいの歩留まりでお客様に訴えるべきか難しい」と話す。
バルデッリには洗い加工物は1点もなく、王道を行くクラシックの本山だ。中でも彼が取り出したフランネルのパンタローネは微妙なグレイトーンが何色もある絶品だ。いわばなくてはならない基本アイテムでフランネルブレイザー、ハリスツィード、コーデュロイ、モールスキンのジャケットやスェードブルゾンに欠かす事のできない必須アイテムだ。
男の不変的アイテムであるフランネルこそ、秋冬ワードローブには不可欠な1品。思わず私も茶のフランネルに手が出てしまった。