The Home of Tweed~Edinburgh,Scotland〈Part 1〉
文/赤峰幸生 Essay by Yukio Akamine
写真/赤峰幸生 織田城司 Photo by Yukio Akamine George Oda
9月中旬、35年ぶりにスコットランドを訪問した。世界有数のツイード生地産地で独自の仕込みをするためである。
若い頃はアメリカン・トラディショナルに憧れてニューヨークへ何度も足を運んだけれど、アメリカのルーツはイギリスであることを知って、イギリスに興味を持った。
イギリスの中でもスコットランド地方はツイードや古典的なニットの産地であることを知り、いつかは行ってみたいと思っていた。
ニューヨークのアルゴンクイン・ホテルのバーで初めて見たスコッチウイスキー「グレンフィディック」の茶色のラベルが格好良く、自分の中でスコットランドの憧れを象徴するイメージになっていた。
ロンドンへ足を運ぶようになって数回目に、ようやくスコットランドまで足をのばすことができた。
当時はロンドンからスコットランドまで汽車で4時間半かかった。車窓が都会から自然の景観に変わり、食堂車の朝食に出た薄切りトーストとマーマレードジャムがいかにもスコットランド風で、長旅も苦にならなかった。
スコットランドで一番大きな街エジンバラはエジンバラ城を中心にした城下町で、むかしの雰囲気が残る古都である。永年風雨にさらされた建物の石の表情に味わいがある。
今回エジンバラで宿泊したのは35年前と同じジョージ・ホテルである。街の景観とホテルは35年前とほとんど変わりがなく、当時の記憶がよみがえる。タイムトラベルができる街は何でも変わってしまう現代では貴重な存在だ。
エジンバラの街角
服を着こなす時は常に何かをイメージして服を選んでいる。映画の中の恰好いい着こなしや、自然の中に見る色のバランスなどを思い浮べて服の組み合わせを楽しんでいる。自分の心の中で感動した物や事を身近に置きたい心理と似ているかもしれない。帰国後、エジンバラで感動した石の表情をツイードの着こなしに取り入れてみた。
ツイードの着こなしは英国カントリースタイルから派生させたスポーティーな格好が多く見られるが、私の場合はドレスアッブスタイルにツイードを取り入れている。
石の斑点のような模様をイメージして、基調となるジャケットは白と茶の小格子を選ぶ。素材は色柄の粒立ちと軽快な印象を意識して、綾織りの多いハリスツイードでは珍しい平織りのタイプにした。
ジャケットの起毛感と合わせるために、古着のウールタイやモールスキンのパンツ、スウェードのシューズなどを選ぶ。
シャツやポケットチーフまで起毛アイテムにすると全体が単調になると思われたので、白のドレスシャツとチョコレート色のシルクサテンのチーフというきれいめなアイテムでバランスをとる。
素材感の均衡をすっきりと見せるために、全身の色を白と茶の2色でまとめた。
石の表情には普遍的な要素があるので、日本の景観にも馴染みます。