TRIP TO MOVIE LOCATIONS
FUSSA,TOKYO
写真・文/織田城司 Photo & Essay by George Oda
1960年代の終わり頃、少年漫画雑誌の裏表紙にモデルガンの広告がのっていた。
当時の洋画は、冷戦を背景に暗躍する国際スパイや、犯罪組織に立ち向かう刑事が登場するアクション物が人気で、画面に登場する拳銃の外観や手持ち感を再現するモデルガンも人気の玩具であった。
そんな時代の空気を反映して、邦画でもアクション物が多数作られた。『狙撃』(堀川弘道監督1968年・昭和43年作)もそのうちの一本である。
犯罪組織から仕事を請け負うプロの狙撃手を演じる加山雄三は、新たな仕事に必要な連射式銃を調達するために向かう先は、福生市の米軍横田基地に面した国道16号線沿いの銃砲店である。
銃砲店の専門家を演じる岸田森は店の地下で銃の闇取引をしている設定で、加山雄三から連射式銃の注文があると、ソ連製の連射式銃をすすめ、ベトナムから横田基地に帰還した米兵の戦利品を闇で入手したもので、足がつきにくい、と説明している。
当時のアクション物は、実際にありそう、と思わせる物語の背景や小道具のリアリティーが重視され、国道16号線沿いのロケも画面に緊張感をもたらしている。
福生市の国道16号線沿いでは、アメリカ人の来店を見込んだ店舗に加え、米軍ハウスとよばれる木造平屋一戸建て住宅がアメリカらしい景観の特徴になっている。
米軍ハウスは米軍が戦後、朝鮮やベトナムで相次いで勃発した戦争で増員する兵士の住居を日本の基地周辺で確保するために発注したものである。
1970年代に入り、極東情勢が落ち着いて兵力が縮小になると、空き家になった米軍ハウスは日本人向けに貸し出され、若者が移り住むようになる。
若者たちはアメリカの自由な雰囲気を取り入れた文化を発信して、新しい時代の風俗として注目されるようになり、米軍ハウスの青春群像を描いた小説は相次いで映画化され、『限りなく透明に近いブルー』(村上龍監督1979年・昭和54年作)や『スローなブギにしてくれ』(藤田敏八監督1981年・昭和56年作)などが公開された。
当時2,000戸ほどあった米軍ハウスは現在100戸足らずになり、国道沿いの商圏も近隣にできたショッピングセンターやコンビニ店に分散して、町の景観は変わりつつある。
国道16号線沿いの老舗イタリアン・レストラン「ニコラ」は永年変わらぬ雰囲気で町の変遷を見つめてきた。
定番のミックスピザは、ぶ厚いチーズの下からスライスしたサラミやマッシュルーム、タマネギ、ピーマンがでてきて、いかにもタバスコが合いそうな、むかしのピザの味がする。
イタリアの味をリアルに再現するというよりも、アメリカのライフスタイルに憧れた時代をしのばせる。
そういえば、最近の少年漫画誌の裏表紙には何がのっているのかと思い、書店で手に取って見たら、学習塾の広告がのっていた。