写真・文/織田城司 Photo & Essay by George Oda
西洋では、ひと夏を避暑地で過ごす習慣が古くからあった。明治期の開国で横浜や神戸を訪れるようになった外国人は、高温多湿の風土になじめず、観光と避暑をかねたリゾートの開発要望が強まった。こうした背景から、箱根の富士屋ホテルは明治11年(1878年)に創業した。
この敷地内には和洋折衷の面白いデザインをたくさん見ることができる。明治36年(1906年)に建造された西洋館は、宿泊する外国人のために、住空間は欧米式を忠実に再現するが、装飾は異国情緒のための工夫で施工されている。釣り鐘風の窓枠デザインが面白いアクセントだ。
国際社会に必死で追いつこうとしながら、西洋のコピーではなく、最初から和を取り入れる別物を作ろうとしたコンセプトに明治人の気概を感じる。