1922年ドーメル社が開発した「SPORTEX」、ゴルフやハンティング等、当時の貴族の「暇つぶし」=「SPORT」の為の生地として、この “ガリガリ” “ゴワゴワ” “ザラザラ” とした生地が出来上がった。
今から25年ほど前、確かキプロス島の英国軍将校ご用達の仕立屋でホコリをかぶっていたこの生地と私は出会った。一目惚れして買い求め、早速フィレンツェのAntonio Liveranoに持ち込み仕立て上げてもらった。考えてみればグザビエ・ドーメルがこの生地を作って70年も経てから出会ったことになる。
この春彼は天に召されたが、私の持つ「SPORTEX」のスーツやジャケットの中に彼は生きている。服を着るとは、身にまとうことではなく、心でまとうこと。今回のグザビエを偲ぶ会で私のドーメルスーツと天国のグザビエが再会できたことに感謝して、「ア ビアン トゥ」、また会いましょうと伝えたい。
赤峰幸生