桜の苗木

AFTER TSUNAMI IN MINAMISANRIKU-CHO, MIYAGI PREFECTURE

文/赤峰幸生 Essay by Yukio Akamine
写真/織田城司 Photo by George Oda

新緑が薫る雨上がりの朝、新幹線で東北へ向かった。

東日本大震災の復興支援活動をおこなう一般社団法人「ルーム・ニッポン」が主催する桜植樹祭に参加するためである。

この催しは、津波で大きな被害のあった宮城県の南三陸町に、将来3000本を目標として、寄付金で集めた桜の苗木を毎年少しづつ植樹することで、亡くなった人々への鎮魂と、桜の名所をつくることを目的にした「KIBOU 311プロジェクト」の一環で、今年2回目をむかえる。

2011年の震災直後、復興支援の想いはあれど、個人では、活動の糸口が見いだせないままでいた。

そんな時に、「KIBOU 311プロジェクト」のご紹介をいただき、主催者たちの熱い志に賛同して、微力ながらプロジェクトに参加させていただいている。

昨年、第1回目の植樹祭に参加して、実際に被災地を訪問すると、報道だけで見ていた印象が一変した。

穏やかな海が突然牙をむき、一瞬のうちに人間の運命を左右してしまう、天災の計り知れない大きさを体感した。

そして、何の因果か生きている自分が、精一杯生きているのかということを、自問自答するようになった。

私にとって、被災地を訪問して植樹祭へ参加することは、この気持ちを忘れないためでもある。

植樹祭に参加した人々は、みな口々に「桜は日本人の希望」と語る。

今年は町のホテルで、ゆかりの演奏家や地元の人々の合唱による植樹祭記念コンサートが開かれた。真近で感じるプロの演奏は素晴らしく、地元の女子高校生が一生懸命唄う合唱に感動した。学生たちが合唱の合間に廊下ではしゃぐ姿を見て、少し明るさがもどったことを感じて安堵した。

被災地の人々を励ましに来たつもりが、力強く、ひたむきに生きている姿に感動して、かえって元気をもらってしまった自分を不甲斐なく思い、来年の植樹祭に対する気持ちを新たにした。