FOLK CRAFTS AND BEAUTY
文/赤峰幸生 Essay by Yukio Akamine
写真/織田城司 Photo by George Oda
19歳のころ、はじめて日本民藝館を訪れ、創始者の柳宗悦(やなぎ むねよし1889-1961)の思想的空間と出会った。
それ以来、折にふれてここを訪れ、かれこれ50回ほどになるであろうか。
柳宗悦が提唱した民藝運動は、濱田庄司、河井寛次郎、芹沢銈介、富本憲吉、棟方志功、バーナード・リーチ等の錚々たる方々が名を連ね、中でも陶芸家の濱田庄司(はまだ しょうじ 1894-1978)の益子参考館には幾度となく足を運んだ。
館内に掲示してある濱田庄司のことば
「その品に出会って驚くことがはじまりで、その品から受けたものを忘れ去ったのちに自分の本当の芽が出て、それが答えだと思います」
は、美しいものを生み出すには、自分の中に常に美しいものを蓄積することが大切と説くもので、私の服づくりの座右の銘にしている。
服づくりも、自然のめぐみを素材として、職人が手仕事で形にすることは民芸品と同じである。
このため、私の服づくりの基本は、常に民藝運動の思想を服づくりに置き換えて、美しい服や職人との出会いを求め、世界中の産地を旅している。
私が日本民藝館を訪れるのは、教会で懺悔をするようなものだ。売らんがために、心ここにあらずの服を作っていないか、胸に手をあて、自問自答するのである。
様々な角度から美のありかたを探求した柳宗悦が収集した民芸品のなかに、作者の魂の宿っていない物はひとつもない。
その美意識に打ちのめされ、しばらく呆然として館内の椅子に座り込み、自分をリセットして、再び現場に向かうことしばしば、私にとっての美の寺子屋たる所以である。