イサム・ノグチ 夢の池

DREAM LAKE BY ISAMU NOGUCHI SENRI, OSAKA

写真・文/織田城司 Photo & Essay by George Oda

池の噴水は水を下から上に放つものと思っていたら、上から下に放った人がいた。日系アメリカ人芸術家イサム・ノグチ(1904〜1988)である。日本人の繊細さとアメリカ人のダイナミズムがミックスした作品を世界中に残した。そのうちのひとつが1970年の大阪万博のために日本政府から依頼されて制作した夢の池で、今も万博記念公園に一部が保存されている。

池のメインとなる彗星と名付けられた高さ33メートルの噴水塔は、残念ながら現在水は出ないが、想像以上の大きさで、大胆なアイデアの雰囲気を感じることができる。赤いポールから水をくみ上げ、立方体の下のジェットノズルから水を噴射するとポールは見えなくなり、立方体が中に浮いているように見え、夜間に立方体の下がライトアップされると、天空から滝が落ちているように見えた。このアイデアで十分見応えがあったので、オブジェはあえてシンプルな形にしたのであろう。

イサム・ノグチは子供も楽しめるような純粋無垢な造形を常に意識していた。大人になると理屈が先行してしまい、素直な感覚を生かすのは並大抵ではないと思いながら写真を撮影している脇で、幼い男の子が池の柵にしがみついていた。後ろから祖母と思われる女性が「またなの…。もう帰りますよ。帰る時にだだをこねないという約束をしたから連れてきたのでしょう。困ったわネエ…」と話しかけていた。イサム・ノグチの想いは、現代の子供の心もとらえていた。