私の中のニュー・シネマ・パラダイス

HERRINBONE WOOL COAT

文/赤峰幸生 Essay by Yukio Akamine
写真/織田城司 Photo by George Oda

昭和35年(1960年)頃からテレビが茶の間に普及し始め、東京オリンピックの工事があちこちで始まるまでは、庶民の娯楽といえは、映画が花形であった。

東横線学芸大学駅近くにかつてあった映画館、ユニオン座。その頃はどの町にも銭湯と映画館と商店街はつきもので、映画は新作が巡回してくるとよく観ていた。

当時、映画館は映画ファンだけのものではなく、唯一の外国文化の情報源でもあった。

なかでも、ヒッチコック、ジョン・フォードの作品に混じって、キャロル・リードの『第三の男』を観た時のことは、今でも目に焼きついている。多分私が最初に見たブリティッシュ・ジェントルマン・スタイルかもしれない。

あれからすいぶん時が過ぎてしまったが、私にとっては走馬灯のように蘇るニュー・シネマ・パラダイスだ。

映画『第三の男』より 観覧車のシーンのジョセフ・コットン
映画『第三の男』のジョセフ・コットン(左)とオーソン・ウエルズ(右)

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