ザ・タワー

EXHIBITION OF THE TOWER AT EDO TOKYO MUSEUM

写真・文/織田城司 Photo & Essay by George Oda

2月29日に世界一高い自立式電波塔となる東京スカイツリーが完成した。これから5月22日の開業に向け、運営の準備をはじめる。

人はなぜ塔を建てるのか、という素朴な疑問を抱いていたところ、地元墨田区にある江戸東京博物館で東京スカイツリー完成記念特別展「ザ・タワー 〜都市と塔のものがたり〜」が開催された(5月6日まで)。レトロな図版を使ったポスターにひかれるところもあり、早速観に行った。

内容は古今東西の塔の中からパリ、東京、大阪の三都に絞って編集され、バベルの塔にはじまり東京スカイツリーで終わる壮大な絵巻は充実した内容で、まさに「ザ・タワー」である。

人々が塔を建てる主な目的は神への信仰、仏の供養、権力や技術の誇示、防御や防災などの見張り、気象観測や電波中継などの実用、遊覧そして象徴などであろう。

1889年(明治22年)に開催されたパリ万博の目玉として建てられたエッフェル塔は、開業当時、石造りの街に鉄の塔は似合わないとして芸術家たちから批判を浴びたそうだ。

翌年浅草に建てられた凌雲閣(通称浅草十二階)は完成当時行列ができる人気だったが、数年後には閑古鳥が鳴き、1923年(大正12年)の関東大震災で上層階が崩壊する。二次災害を防ぐために工兵隊により爆破され、跡形も無く消え去った。その模様は川端康成の小説に登場する。

東京タワーは1958年(昭和33年)に世界一のタワーとしてデビューした。その後記録は破られたが、怪獣モスラが繭を作り、007シリーズに登場するなど、強烈なインパクトを残し、高度成長時代の象徴として回顧されている。

東京スカイツリーは数値を基準にした世界一を売り物にするのであれば、一時的な集客は見込めるであろうが、記録は破られるためにあり、その後はどうするのか。少なくとも先輩の塔たちは文士や芸術家により、絵画、小説、映画などの中に描かれる情緒があった。

東京スカイツリーはせっかく建てたのであれば、人々の心に残る存在になってほしい。

六本木ヒルズから東京タワーと東京湾を見渡す