テストドライバーズジャケット

文/赤峰幸生 Essay by Yukio Akamine

20年程前、イタリアのコモにあるカロッツェリアZAGATO(サガード)社の服部門に、ある日本の百貨店担当者の方と仕事で訪れた時の事。実物大の車のモデルをウーノ・クワランタ・トレ(伊語で1/43:43分の1)の大きさに縮小した木彫りのミニチュア版を削ってからプロトタイプの車づくりに入ると聞いて、当時は随分と驚いた。

娘さんのマウラ・ザガードさんが工房を案内してくれ、物づくりの哲学を詳しく説明してくれた。様々な美しいフォルムの中でも、AlfaRomeoGiuliaTZ1の真っ赤な色は今でもしっかり目に焼き付いている。

工房の隅にさりげなく掛かっているレザージャケットを手に取ると、実に軽いこと。裏地はなく、裏側も全て鞣されている革(伊語でインクロッチャート)である。彼女は‘このジャケットはテストドライバーがコモ湖を一周するとき羽織るのよ’と教えてくれた。

あれから、14~5年前はY.Akamine Made in Italy ブランドで、今はAkamine Royal Lineブランドで復刻している。何かにつけて便利に着てしまう不変の定番ジャケットだ。