KHAKI COTTON SUIT
文/赤峰幸生 Essay by Yukio Akamine
写真/織田城司 Photo by George Oda
夏のスーツ素材は、ウールのモヘア、リネン麻、コットンが3本柱だ。歴史の中で培われ、自分も実践してきた結果である。この3種の素材の特徴を生かして、着ていく場面や気分で使い分けている。
カーキのコットンスーツは、植民地時代に英国人が赤道付近の国を統治するために生み出し、ウールより軽くてやわらかく、麻ほどシワにならない使い勝手が世界に広まり、定着したアイテムだ。
今着ているカーキのコットンスーツは15年程前にイタリアで仕立てたものだ。素材のコットンは、繊維長の長い原綿からできる細い糸を、ギャバジンと呼ばれる綾織りにたっぷり打ち込んで使っているので、しっかりしたコシと光沢感があり、シワやクタリ感が少なく、やわらかさの中に、きちんとした外観を保っている。
コットンは農作物なので、ワインのように天候によって品質が左右される。生地の産地や銘柄に固執するよりも、先入観なく手のひら全体で生地をつかみ、引っ張ったりしながら、ハリやコシ、伸縮性を確認して、永年着用しているうちに、どのようにな表情に変化するのか想像しながら吟味している。このスーツも着用しているうちに、生地の表面に桃のような細かい起毛が生じて良い味になってきた。
カーキのスーツは、日本人の肌の色に合わないと思っている方もいるようだが、スーツをきれいに見せるのは肌の色ではなく、あくまでも、スーツと肌の間に介在するシャツやネクタイ、靴下や靴との色合わせのバランスだと思っている。普段から目や手の感覚を研ぎすますことが、着こなしの幅を広げてくれます。