シャツの衿元

文/織田城司 Essay by George Oda

日本では古くから「衿元を正す」という言葉がある。

シャツの衿元はネクタイを結んだ時に左右の衿の三角形の頂点がぴったり合わさることを、工業生産では衿元開き0ミリなどと設定され、略称で衿開きゼロポイントなどと呼ばれる。このゼロポイントのシャツは紳士服の原点英国のシャツに多く、明治維新の洋装を取り入れた日本はこれを参考にした。
 
一方、イタリアのシャツに対するデザインアプローチはネクタイを結んだ時に衿元が合わないように、わざわざ8ミリから12ミリ位までのスペースを取るものが少なくない。この意図としては、服の着こなし全体に柔らかい印象をもたらす効果を狙ってのものであろう。
 
日本人はどちらが正式かとか、どちらが良いのかと優劣を付けたがるが、強いて言えばどちらも正解で、どちらも持ち味なのだ。着る人がどのように全体像をまとめたいかによって選択すればよい。

どちらにしても、ネクタイを結んだ時にゆるんでいては、だらしなく見えることに変わりはない。