箱庭スキー

写真・文/平田元吉 Photo & Essay by Motoyoshi Hirata

1月中旬、欧州出張先で友人と合流し、フランスのシャモニー・モンブランスキー場を訪れた。

滞在期間中、空は快晴、雪の状況も申し分なく、最高のスキー旅行となった。

欧州スキーを初めて経験したのは今から約20年前の大学生の時。中学生の頃から熱中していたスキーの本質をつかむため、大学を約2ヵ月間休学して、スキーの聖地オーストリアにスキー留学を決め、お中元の配達アルバイトで貯めたお金と今は亡き祖母の援助でオーストリアに旅立つ事が出来た。

まだ若かったこともあるが、当時は見るものすべてが衝撃で、スキーというスポーツに対する考え方が日本と大きく違ったことに視野の狭さを感じた。

ここで、当時僕が感じた代表的な事を3つ挙げたい。

まず「自己責任」

欧州のスキー場は自己責任が基本。広大な氷河のバーンには一応ポールが立っていて、そこを滑れば一応クレパスに落ちないですよ、といった指標はあるが、どこを滑るのも自己責任。切り立った崖やどうやったら行かれるのかありえない場所に残ったシュプールの後もあるが、自分がケガをしても自己責任。

そして「スキーの型」

日本のスキーは、レベル分けが「ボーゲン」→「パラレル」→「ウェーデルン」といった形で考えられている事が多く、僕も学生時代はそのような形で練習を重ねていった。ところが、オーストリアでは単に大回り、中周り、小回りの違いがあっても特にどれが上級といったレベル分けはない。大きく違うと思ったのは、どの滑りでも連続した動きや体重移動の流れがある。スキー雑誌の写真などで覚えたスキーヤーは止まった「型」を優先しがちで、例えばパラレルなど斜滑降でカチっと止まった型でななめに滑るだけという人も多かった。本来は動いている流れの中での1つの瞬間が、勘違いされて伝わってしまったのだろう。当時の日本のゲレンデではカチカチの型にはまったスキーヤーがかなり多かったが、欧州のスキーヤーはあまりカチっと型を意識して滑っている人がいないように思えた。

最後に「楽しみ方」

スキー場にいる人たちの年齢層が幅広く、日本では若者中心のスポーツといったイメージがあっただけにこれには本当に驚いた。特に60、70代に見える方々も多く、そんな人たちがヘルメットをかぶってガンガンアイスバーンを飛ばして滑っている。オーストリアはスキーが国技であることもあるが、年齢を問わず、楽しんでいる。そしてスキーやスノーボードで滑って遊ぶだけでなく、のんびりと食事をしたり宿のベランダで本を読んだり、お酒を飲んだり、長期間の滞在をゆったりと自由に楽しんでいる、そういうスタイルが新鮮に見えた。

日本のスキー場を振り返ると、流行の音楽が流れる中で最新のウェアで着飾った人たちがリフト券の元をとるためにあと何本滑ろう、とか、日帰りで寝ずにスキーをするとか、誰かが作った「箱庭的」環境の中で管理された中で遊んでいるような気がして、僕も昔は一通りそんな形でやってきたのだが、オーストリア留学後はもうちょっと自由でもよいのではないかと思うようになった。

スキーを通じて色々な事を想い学ばせてもらったのですが、円高の今、海外スキー、特にダイナミックな自然が素晴らしい欧州スキーをぜひ一度体験することをお勧めします。

(写真はシャモニーのゲレンデで出会った方と記念撮影。なんと年齢76歳だとか。日本から1人で来ているそうで颯爽と滑っておられて素敵だったので記念に一緒に撮ってもらいました。)